プチコミック6月号の どうしようもない僕とキスしよう 9話の感想です
どうしようもない僕とキスしよう 9話 北川 みゆき 先生 著
ネタバレありの感想ですので、ご注意ください!
『子供の頃 仲がよかった姉は 高校入学辺りに オレを避け始めてから いつも閉まった扉の向こうにいる』
『その理由は わからないけど――――――』
『嫌われてるのは わかる』
『…違う “好きの反対は 嫌いじゃなくて 無関心” …ってやつか』
ずっと藍のことを想ってきた 翠斗は、ずっと藍のそばに い続けるため、老舗ホテルのマルケーズホテルへ就職し 仕事に邁進しています。
社会的に安心される会社で 認められ、誰も 文句をつけようがない人間になる。誰が見ても、姉への狂気を飼っているなんて 思われない人間になる。その目的を果たすために。
『この気持ちが 錯覚や憧れ 家族への愛情なんかじゃないと気づいた時に ――――――誓った』
『藍のそばにいるために 立派な弟として生きる』
『どんなに嫌われようが 疎まれようが かまうもんか』
『姉さんは オレが守る』
藍が選んだ相手は 蘇芳香平だけど、付き合う前 気持ちもないのに 藍を抱いていた、という理由で 彼を認めません。
マルケーズホテルのバー「スリースター」に、ヒカリビールのリキュールを使った オリジナルカクテルを置いてもらえることになり、そのフェアのプレパーティーが いよいよ開催。
当日の天気は あいにくの大雨ですが、大勢の人が集まります。
企画に関わっている 蘇芳、翠斗、タカオ、招待された 渉、藍も、会場に来ていました。
パーティー開始の直前、店内の照明が すべて落とされ、カウントダウンが始まります。
事前に そういった演出が行われることを知っていた 翠斗は、暗闇に紛れ 藍を抱きしめました。
台風の夜に 車の事故で両親を亡くしてから、藍が今でも 雨の夜を怖がっていることを、知っているからです。
外は大雨、照明が消えたことに驚き 震えていた藍の体を、何も言わず 後ろから抱きしめ、支えてくれた 翠斗のおかげで、落ち着きを取り戻せた 藍。
照明が点いて すぐに振り向きますが、もう翠斗の姿は ありませんでした。
子供の頃の ある雨の夜、怖がる藍の隣に 寄り添っていた翠斗。
雨がやみ 星空が見えるようになった時には すでに、藍の意識は 眠りの中でした。
すると、自分の隣で 安心して眠る 藍の唇に、翠斗は そっとキスをします。
……
姉さんを守るためなら 狂気なんて隠せる。そう思っていた 翠斗ですが、プレパーティーを終え 自宅に戻ってきて、藍が浴室にいることに気づいた その瞬間、限界が近づいていることを 自覚しました。
『あの時』
『暗闇の中 そばに行けたのは 心配で ずっと見ていたからだけじゃない 香水とも』
『ほかの誰とも違う 甘い匂い 間違えるはずのない―――』
『オレを おかしくさせるのは』
『――――――姉さんの匂い』
『柔らかくて 細くて 簡単に』
『抱き潰せてしまえそうな体』
……
藍を守るため 翠斗は、「姉さん オレ この家を出る」と言います。
すると、それまで ずっと翠斗のことを避けていたはずなのに、藍は 振り向き、ひどく動揺した顔を見せたのです。
それは 一瞬のことだったけれど、翠斗にとっては とても大きな出来事でした。
『オレが 家を出ようが 関係ないんだろ』
『ずっと 無視し続けてきたんだから』
『なのに』
『そんな表情 どうして どうして』
「………」
「“好きの反対は 嫌いじゃなくて” …“無関心”」
『だったら もし もしも』
『好きな気持ちを隠したい時は――――――』
まさか…と思いつつ、ほんのわずかな欠片でも 姉に、弟である自分への気持ちが あるのならば、閉じられた藍の扉を こじ開ける、と 翠斗は静かに決意しました――――――