LaLa(ララ)5月号の天堂家物語42話の感想です
天堂家物語 第四十二話 斎藤けん 先生 著
ネタバレありの感想です。ご注意ください!
熱を出して 倒れてしまった 雅人は、夢を見ていました。
昔の… 冷たい記憶を――――――
『集落から外れた 一軒家は 父が用意したものらしい』
『家事手伝いの老女が帰ると 家には 俺と母の二人だけ』
『母は生まれつき 目が弱く ぼんやりとしか物が見えない』
『動かず 喋らず 置物のような人で』
『父の知人だという 立花修一郎さんは』
『週に何度か 菓子や本を土産に やってきて』
『学問や剣術を教えてくれた』
『三人で囲炉裏を囲んで 父の昔話など聞くときは』
『母も普段より 楽しそうに見えた』
雅人が 数え年で11歳の時に、雅人の父は 戦死します。
立花さんから、父の死と 立花さんの正体を 告げられたけれど、特に辛くはなかった 雅人。
それよりも 立花さんと過ごす時間が増えて 嬉しい、と感じていました。
雅人について黙っていたことを責められ 天堂家を追い出された 立花さんは、本来なら 雅人が天堂家を継ぐべきなのに そうならない現状を嘆きますが、雅人は 何とも思っていないのです。
『同じ家に住むことこそ 固辞されたが』
『共に時を過ごし』
『これからも過ごしていくのだと思い』
『3年の月日が経ち―――』
『事態は急変した』
『祖父が 病に倒れ』
『遺言で 俺を天堂家に迎えるようにと 遺したらしい』
立花さんは 安堵の表情を浮かべて、そのことを 雅人と 雅人の母に伝えました。
だけど、雅人は…… 雅人の気持ちは……
「俺は別に 天堂家になど 行きたくありません」
「天堂家を捨てて 俺達と 本当の家族になって下さい」
「―――どうか その様なことを 仰らないで下さい」
「あなたは 貴人様の息子なのです」
「あなたには もっと相応しい人生が……」
『勘違いをしていたのは俺の方だった』
『修一郎さんは 俺ではなく』
『父の息子を見守っていたのだ』
……
天堂家を名乗ることになってから 暮らしは格段に良くなったけれど、広く昏い屋敷の中で 心が不自由な生活を送らなければならなくなった 雅人。
しばらくすると、雅人の母が 祖母の開く茶会に 招かれるようになります。
雅人が断るように勧めても 母は茶会に通い、茶会の後は 寝込むことが多くなり、腕や足に 不自然な痣と傷が増えていく…
見かねた 雅人は、母に「この家を出よう」「どこでだって生きていける」と言いました。
しかし 母の応えは――――――
「どこにも行かない」
「… 貴人さま」
「なぜ 戻ってきて下さらない」
「ずっと 待って いるのに…」
今も なお、父の帰りを待ち続けている 母の姿を見て、雅人は 絶望します。
立花さんと三人で過ごした あの日々を、母は 自分と同じように感じてくれてはいなかったと、知ってしまったから……
『馬鹿馬鹿しい』
『俺だけだ』
『家族だなんて思っていたのは』
その後、惨殺された母の遺体の前で、決意した 雅人。
父に似ていることが この家で力を持つならば 俺は 父の様に振る舞おう、と―――
『見ていろ』
『こんな家』
『滅茶苦茶にしてやる』
冷たい記憶… でも、雅人の記憶は らんが現れることによって 明るくなります。
呼びかけた その時、眠りから覚めると 目の前に らんがいました。
雅人は、らんを抱き寄せ 「ここにいろ」と言います――――――